matsukaz's blog

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「Brain Dots」の模倣アプリは付き合いのある広告プラットフォーム企業によって支援されていた・・・

こんにちは、株式会社トランスリミットCTOの松下です。

先日、弊社代表の高場が以下のツイートをつぶやきました。

また高場のツイートを見たTechWave様も、以下の記事を上げてくださいました。

普段は技術的な内容中心のブログですが、今日は株式会社トランスリミットのメンバーとして、本件に関して思うところを書きたいと思います。

模倣問題はアプリやゲームに限らない話だと思いますので、プロダクトやコンテンツを提供されている方には、ぜひご一読頂けると嬉しいです。

経緯

まずは冒頭のツイートに至るまでの流れを説明します。

弊社2作目となる「Brain Dots」リリース

弊社は2015年7月6日に「Brain Dots」をリリースしました。 おかげさまで全世界の皆様にご好評いただけて、リリースからわずか10日で100万DL、1ヶ月で1000万DLに達し、いまでは3000万DLを突破しています。

アプリ内では収益化の一つの方法として、AppLovin社が提供している広告プラットフォームSDK「AppLovin」を導入しました。これによりAppLovin社は、「Brain Dots」のユーザ数や継続率、収益性などの主要KPIを把握出来る状況だったのではないかと推測しています(単純にSDKを入れているだけでなく、日本法人の方とお話ができる関係でした)

Supertapx社が「Love Balls」をリリース

「Brain Dots」リリースから2年以上が経った頃、Supertapx社が2018年4月に「Love Balls」をリリースしました。

弊社としては数ある「Brain Dots」の模倣アプリの一つという認識でしかなく、正直「またか」という感想でした。以下は、Google Playで「Brain Dots」で検索した結果のほんの一部です(左上が「Brain Dots」、それ以外のほとんどすべてが模倣アプリ。「Love Balls」もありました)

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しかし「Love Balls」はリリースから2ヶ月足らずで1億4千万DLを突破し、模倣アプリという域を達し、あっという間に「Brain Dots」のDL数を超えました。この時点でも、正直なぜ「Love Balls」がここまで流行ったのか分からない状況でした。

メディア各社も同様だったようで、いくつかの憶測が飛び交っている程度でした。 ただその中でも、興味深い記事を上げているメディアがありましたのでご紹介します。

Some industry observers in China, citing sources close to Supertapx, suspect it’s a Chinese studio operating under AppLovin -- a California-based mobile marketing company that received a massive Chinese investment last year. It does seem like creating a low-cost viral game could be a viable way to spread ads.

We tried to contact Supertapx through email and Facebook but did not get any response.

2018年6月13日の記事ですが、「Supertapx社はAppLovin社が作った中国のスタジオなのではないか」という指摘をされていました。確かな情報は分からないままですが、AppLovin社の名前が出てきたことに正直驚きましたし、何かしら関係があるからこそ名前が上がるのでは、と思わずにはいられませんでした。

AppLovin社が「Lion Studios」を発表、「Love Balls」の発行元に

そんな中、2018年7月13日にAppLovin社が「Lion Studios」を新設、メディア事業を開始することを発表しました。

驚きだったのが以下の内容です。

Lion Studios は2018年3月から試験的に運用を開始しており、現在までのわずかな期間で、Lion Studiosが支援したアプリのダウンロード数は数億に達しています。 (中略) ランクインしたタイトルには、大ヒットのパズルゲーム「Love Balls」 (中略) が含まれます。

Lion Studiosのサイトにも大きく成功事例として紹介されています。

Lion Studios drove Love Balls to #1 in the charts in just 24 hours

https://lionstudios.cc/success-stories/

つまりAppLovin社は「Love Balls」リリース以前から深く関わっていたわけです。

AppLovin社をビジネスパートナーとして信頼していたにもかかわらず、 「Brain Dots」を知った上で(知らないはずはないと思っています)模倣アプリ「Love Balls」を支援していた、ということ対し社員全員憤りを感じました。 高場の冒頭のツイートも、その流れでつぶやかれたものです。

弊社から見たAppLovin社、Supertapx社との関係を図式化すると、以下のようになります。

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模倣アプリへの対策

模倣アプリの登場は、個人的にはある意味仕方ないことかなと思っています。 前職と合わせてゲーム開発に携わって7年になりますが、過去にも様々なサービスを模倣された経験があり、中にはサービス内の画像をそのまま利用されてしまった悪質なケースもありました。こうしたケースに個別に対応してもイタチごっこになってしまうのです・・・。

模倣されるということは、それだけ良いサービスを作っているという証です。 オリジナルであることを主張し続けた上で、模倣されても勝てないぐらいのクオリティや機能を提供し、やっても無駄だと思わせることが一番の対策なのではないかと思います。 もちろん模倣アプリにオリジナルが負けるようなことがあると、オリジナルを開発するために費やした労力が報われないというのは開発側にとって死活問題です(まさにその状況です・・・)。

しかし、売上を最優先にしているからこそ模倣アプリを作るのでしょうが、一般ユーザからすれば同じようなアプリが乱立して嬉しいことがありますか? 何よりも、同じゲーム開発に携わるものとして、模倣アプリに費やした労力も「もったいない」と思わずにはいられません。 素晴らしい技術をお持ちの方もたくさんいらっしゃると思うので、ユーザに新しい価値を提供できるような新規アプリ開発にその力を発揮してくれたら、と願うばかりです。

模倣アプリを支援する企業の問題

模倣アプリが出てしまうことは仕方がないことかもしれませんが、模倣アプリと分かった上で企業が支援することには、大きな問題があると思います。 今までは企業間の問題程度で済んでいたかもしれませんが、今回のケースのようにAppLovinのような大企業が全力で支援をすれば、オリジナルを凌駕する成果を上げることもできますし、オリジナルであることすら認識されなくなってしまうかもしれません。 AppLovin社は広告プラットフォームという立場である以上、モラルを持って社会的責任を果たしてほしいものです

以下はAppLovin社の坂本氏が、「Love Balls」が「Brain Dots」の模倣アプリではないか、と指摘されたことに対する対応です。

  • コピーライト・パテントを侵害していなければ、模倣かどうかは全て主観による
  • 模倣の推奨も指示もしていないが、問題のないタイトルであれば支援に差をつけることはない

とおっしゃっています。その結果が今回の「Love Balls」を開発したSupertapx社への支援なのでしょう。

「模倣かどうかは全て主観による」とのことですが、後述したSupertapx社の過去のプロダクトと模倣元の比較を見ても同様のことが言えるのでしょうか? 少なくとも自分の目には、Supertapx社は模倣アプリしか作っていない会社、というようにしか見えません。 支援先の会社が過去にどんなプロダクトを作っていたのか、チェックされていないのでしょうか…?

勘違いして頂きたくないのは、Lion Studiosのようにデベロッパーを支援してくれるスタジオの設立は、本当に素晴らしいものだと思います。

ゲームデベロッパーのアプリのパブリッシングとプロモーションをサポートします

とのことですので、個人やインディーデベロッパーにとってこれほど強力な支援はないでしょう。

そして

Lion Studios の設立を記念して、AppLovin はゲームアプリデベロッパーを対象とした Ultimate Game Changers コンテストを開催することになりました。上位4タイトル入賞者様に、総額30万ドル(日本円で約3,300万円)の賞金を贈呈いたします。

についても、とても素晴らしい試みだと思います。

www.applovin.com

ただコンテストの詳細を拝見したところ、評価基準が

審査ポイントは、ゲームの”Virality”と”Stickiness”です。Virality とは人々が思わず話題にしてしまうようなそのゲーム独自の魅力、Stickiness はユーザーが何度もゲームを起動しプレイし続けてしまうような、言わば「顧客維持力」を意味しています。

とありました。 せっかくのゲームコンテストであるにもかかわらず、収益のあげやすいバイラル性と中毒性のみに注力している点は、非常に残念だなと思います。 またAppLovin SDKの導入が必須条件になっているのも、アプリのKPIに重きを置いて判断を行うためで、純粋なゲームとしての面白さではないという点でも気になります。

願わくば、コンテストで評価されるゲームが模倣ゲームではなく、世界中のユーザに楽しんで頂けるオリジナリティ溢れるゲームが出てくることを祈るばかりです。

Supertapx社のアプリと、その模倣元アプリ比較

最後に、今回弊社の「Brain Dots」の模倣アプリ「Love Balls」を開発したSupertapx社が過去に開発したアプリをご紹介します(2014年に出していた数本も同じように模倣アプリでしたが、古いアプリですので除外しています。その後リリースがなく、2017年11月に突然リリースラッシュになったのにはなにかあったのでしょうか)。 個人的に調査したところ、ほとんどのアプリに関して模倣元が存在しているのではないかと思いましたので、その比較も行っております。 ご覧になった皆様は、どのような感想をお持ちでしょうか?

そして、このような会社をAppLovin社が支援したことについて、どのような感想をお持ちでしょうか? 今後Lion Studiosが支援するアプリについても、注目していきたいと思います。

タイトル Supertapx社情報 模倣元情報
Love Balls (com.supertapx.lovedots) 2018年4月にリリース。www.youtube.com 株式会社トランスリミットの「Brain Dots」。2015年7月6日リリース。 www.youtube.com
Tappy Shots (com.supertapx.tappyshots) 2017年11月頃リリース。 www.youtube.com Voodoo社の「Dunk Hit」。2017年8月頃リリース。www.youtube.com
Buddy Flip (com.supertapx.flip) 2018年1月頃リリース。www.youtube.com Ketchapp社の「Bottle Flip」。2016年11月頃リリース。www.youtube.com
Number Drawing - Coloring Book (com.supertapx.pixelcolor) 2018年2月頃リリース(すでにストアから削除済み) appfind.org UNICORN: Pixel Art Drawing」。2017年11月頃リリース。 play.google.com
Tasty Block Puzzle - Fun puzzle game with blocks (com.supertapx.kitchenpuzzle)、Toy Puzzle (com.supertapx.tenpuzzle) ほぼ同一アプリ。2018年2月頃どちらもリリース。 www.youtube.com www.youtube.com 「Candy Block Puzzle」。2017年11月頃リリース。 www.youtube.com
Love Shots 2018年7月頃リリース。
Love Shots

Love Shots

  • Super Tapx
  • Games
  • Free
2018年4月頃リリース。
Trick Shot 2

Trick Shot 2

  • Jonathan Topf
  • ゲーム
  • ¥360
ColorTube (com.supertapx.colortube) 2018年5月頃リリース。www.youtube.com Voodoo社のRolley Vortex。2017年8月頃リリース。www.youtube.com
Idle Sweeper (lv.yarr.idlepac.game) (パッケージが異なるのでどこからか買収したもの?) 2017年11月頃リリース。www.youtube.com 不明。
DrawIn (com.supertapx.drawin) 2018年5月頃リリース。www.youtube.com 不明。